「2人で生活するには広すぎるから」
「相続したけど住まないから」
「資金を確保したいから」
さまざまな理由から、不動産を売却するキッカケは訪れます。ただ、一生のうちにそう何度も不動産売却を経験される方は、少ないでしょう。
一生のうちに1回あるかどうかの不動産売却ですが、失敗せずに売却したいと思うのは当然のことです。不動産の売却はとても大きなお金が動くため、失敗しないためにいくつか注意するべき点があります。
今回は、はじめて不動産を売却される方に向けて、「不動産売却時の注意点」についてお伝えします。ぜひ、不動産売却時の参考にしてください。
不動産売却までの大まかな流れは5ステップ
不動産売却までの大まかな流れは
- 見積もり依頼
- 不動産業者選び
- 売却活動の開始
- 売却決定
- 引き渡し
以上の5ステップです。こまかいことを言い出せばキリがありませんので、上記5ステップを大まかな流れとして把握しておいてください。
不動産を売却する際には多額の資金が動くため、失敗しないために、できるだけ慎重に取引を行いたいはずです。そのためにはまず、不動産売却の流れについてざっくり把握しておいたほうがよいでしょう。
不動産売却までの流れを知っておくことで、具体的なイメージがしやすくなり、後にお伝えする注意点もイメージしやすくなります。不動産売却成功へのカギとなるので、ぜひ参考にしてください。
では、それぞれのステップではどのようなことを行うのか、もう少し詳しくお伝えします。
ステップ | 大まかな流れ | 具体的な内容 |
---|---|---|
1 | 見積もり依頼 | ・売却相談 ・見積もり依頼 ・訪問査定 |
2 | 不動産業者選び | ・媒介契約の締結 |
3 | 売却活動の開始 | ・広告や宣伝(情報発信) ・内覧対応 ・不動産会社との打ち合わせ |
4 | 売却決定 | ・売買契約の締結 ・一部代金の授受 ・買主への引き渡し準備 |
5 | 引き渡し | ・所有権移転登記 ・買主とともに物件確認 ・残代金の授受 |
不動産売却の流れ別注意点
次に、不動産の査定依頼から引き渡しまでに注意すべき点についてお伝えします。内容を先出しし、ざっくりお伝えすると
- 見積もりは複数社に依頼
- 媒介契約に要注意
- 価格設定は不動産会社と応相談
- 住宅ローン特約に注意
- 引き渡し時の責任について
上記内容を含めつつ、それぞれステップごとの注意点について詳しくお伝えします。
1.見積もり依頼の注意点
不動産の売却を検討し始めてから、まずはじめに行うのが「見積もり依頼」です。売却を検討している不動産がいくらくらいで売却可能なのか?を査定してもらうために行います。
見積もり依頼時に注意すべき点は2つです。
- 見積もり依頼業者によっては数百万円単位で価格が変わる
- 戸建て住宅や土地売却時は測量が必要になることもある
以上の注意点について、詳しく見ていきましょう。
見積もり依頼業者によっては数百万円単位で価格が変わる
見積もり依頼する業者によって、査定額が数百万円単位で変わる可能性は十分あります。そのため必ず、複数社の不動産業者へ見積り依頼をしてください。
そもそも、査定額は「弊社にお任せいただければ〇〇万円程度で売却できますよ」の金額であり、必ず売却できる金額ではないことも注意しましょう。
売却力のある不動産会社であれば高く売れますし、売却力に乏しい不動産会社であれば、売却価格も低くなることでしょう。「A社では2,000万円の査定だったけど、B社では2,500万円の査定だった」という話もよくあることです。
戸建て住宅や土地売却時は測量が必要になることもある
戸建て住宅や土地などの不動産を売却する場合、売主の土地の境界を明確にするため、「確定測量」を行います。確定測量を行う目的は、トラブル防止であって、買主から境界確認書を求められた場合に必要です。
そのため、戸建てや土地の売却であっても「境界確認書」の準備ができていれば、改めて確定測量を行う必要はありません。なお、確定測量を行う際の費用負担は、売主と買主で交渉を行うのが一般的です。
売却前までに境界確認書を準備しておきたいのであれば、売主が負担しなければいけませんが、費用は数十万円~と高額なので注意してください。
2.業者選びの注意点
見積もり依頼を行った中で、いちばん査定額の多かった不動産業者に選べばいいのか?といえば、そうとも限りません。査定額はあくまでも「弊社であればこの金額程度で売却できる可能性(自信)があります」など、確定的なものではありません。
そのため、査定が高くても売却できなければ売却金額を下げざるを得ません。また、できるだけ早く売却したくても、売却できなければ意味がないでしょう。
そこで、業者を選ぶ際の注意点は2点です。
- 不動産業者選びは査定金額のみで選ばない
- 媒介契約には要注意
以上の点について詳しく見ていきましょう。
不動産業者選びは査定金額のみで選ばない
不動産業者を査定額のみで選んでしまうと、失敗してしまう可能性が高くなります。査定額が高く、魅力的に見えるかもしれませんが、売却できなければ意味がありません。
売却力のある業者かどうか、実績や口コミはどうかなど、徹底的に調べたうえで最終的な決定をしたほうがよいでしょう。
媒介契約には要注意
不動産を売却される方のほとんどは、不動産会社に仲介してもらい、売却を目指します。この不動産会社に仲介してもらう契約を「媒介契約」と呼び、媒介契約には3つの種類があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
どの媒介契約で契約を締結するかによって、自由度が異なります。
媒介契約 | 自分で見つけた相手との取引 | 複数社との契約 | 物件登録義務 |
---|---|---|---|
一般媒介契約 | ○ | ○ | 義務なし |
専任媒介契約 | ○ | ☓ | 契約日から7日以内 |
専属専任媒介契約 | ☓ | ☓ | 契約日から5日以内 |
1日でも早く売りたいのであれば、複数社と契約が締結でき、自分でも取引相手を探せる一般媒介がおすすめです。
一方で、一任して信頼できる不動産会社と売却を目指したいのであれば、専属専任媒介契約がおすすめです。売却の目的などによって、選ぶべき媒介契約の種類が異なるので注意してください。
3.売却活動の注意点
無事に媒介契約が締結されれば、早速売却活動が開始されます。売却活動を行う際に注意すべき点は3点です。
- レインズへの登録義務
- 売り出し価格の決定
- 内覧時の注意点
以上の点について詳しく見ていきましょう。
レインズへの登録義務
レインズとは、不動産流通機構が運営しているシステムであり、レインズへ登録された物件はすべての会員が閲覧できます。そのため、不動産の購入を検討している方の目に付きやすく、売却活動のツールとしてとても優秀です。
レインズへの不動産登録義務は、専任媒介と専属専任媒介契約であり、一般媒介契約ではありません。ただ、一般媒介契約でも登録は任意で可能です。
そして、レインズの登録義務で注意しなければいけないのが、「売却を公にしたくない方」です。専任媒介以上になると、レインズへの登録が義務になってしまうため、登録をされたくない方は注意してください。

出典:REINS TOWER
売り出し価格の決定
査定額をもとに不動産業者と相談のうえ、売り出し価格を決定します。安くてもいいからとにかく早く売却したいのか、時間はかかってもできるだけ高額で売却したいのかなど、要望等も含めて売り出し価格を決定します。
人気のある地域や物件だと、少し強気な価格設定で売り出したくなるでしょう。しかし、高額な価格設定でなかなか買い手が現れなければ、「売れ残り」のイメージが付いてしまいます。
売れ残ってしまえば、価格を平均水準まで下げたところで、売却できない可能性もあります。売却価格を決定する際には、不動産業者とよく打ち合わせをしたうえで、慎重に決定しましょう。
4.売却決定後の注意点
売却活動がうまくいき、買い手が見つかったら、次に売買契約の締結を行い、売却が決定します。売却決定後に注意すべき点は2点です。
- 住宅ローン特約に注意
- 売却が決定しても、この時点では手付金しか受け取れない
以上の注意点について詳しく見ていきましょう。
住宅ローン特約に注意
不動産を現金一括で購入する方は少なく、ほとんどの方が住宅ローンを組みます。この住宅ローンは融資を受けるための審査がありますが、審査に通過しなければ不動産の購入費用を支払えません。
そこで、「もしも住宅ローンの審査に通らなければ、今回の売買契約はなかったことにしてください」というのが、住宅ローン特約です。
売買契約を締結すれば、売主と買主ともに債務を背負います。そのため、買主が住宅ローンの審査に通らなかったことを理由に債務を履行しないのは、債務不履行となり、売主に対して賠償責任を負わなければいけません。
しかし実際には、住宅ローンを通してみなければ結果はわかりません。審査に通らなかった人に対して、数千万円の費用を支払うよう訴えたり、賠償金を請求したりするのはあまりにも酷です。
そのため、住宅ローン特約があり、この特約が付いていると契約が無効になる可能性があるので注意してください。
売却が決定しても、この時点では手付金しか受け取れない
売却が決定し、買主が住宅ローン審査に通過しても、この時点では手付金しか受け取れません。手付金は法律で定められているわけではありませんが、物件価格の5%~10%が相場です。3,000万円の不動産であれば150万円~300万円程度です。
買主から相談を受けて、手付金をゼロにしたり安くしたりしてもいいですが、手付金は違約金的な意味合いがあるので注意してください。手付金が安いと簡単に解約されてしまう可能性があります。
5.引き渡し時の注意点
売却が決定すればあとは、引き渡しの準備です。引き渡しを行う際の注意点は2点です。
- 所有権移転登記に要注意
- 引き渡し時は、売主と買主必ず一緒に
以上の注意点について、詳しく見ていきましょう。
所有権移転登記に要注意
所有権移転登記は義務ではないため、登記をしなくても罰則はありません。ただし、所有権移転登記を行わなければ、買主が自分の権利を主張することもできず、売主と買主ともに不利益を受けてしまいます。
「義務ではないから」と放置せず、必ず所有権移転登記を行うよう注意してください。
引き渡し時は、売主と買主必ず一緒に
物件引き渡し時には、必ず売主と買主一緒に確認をしてください。内覧時に見つけられなかった、こまかいキズ等が発見されることもあるでしょう。後のトラブルを防ぐためにも、とても大切です。
不動産の売却益は譲渡所得として課税対象!
不動産の売却がすべて完了したらそれで終わりではなく、しっかり税金を納めなければいけません。不動産の売却によって得た所得は、譲渡所得として、所得税および住民税の課税対象です。納税を怠ると最悪の場合、追徴課税が課されますので注意してください。
それでは早速、譲渡所得の計算方法や追徴課税について見ていきましょう。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得の計算式は【売却価格-取得価格】です。たとえば、売却価格が4,000万円、取得費用が5,000万円であれば
なので、税金は発生しません。
一方で、売却価格が取得費用を上回った場合。たとえば、売却価格5,000万円、取得費用4,000万円であれば
なので、1,000万円に対して譲渡所得が課税されます。
あくまでも、売却価格が取得費用を上回った部分にのみ、課税される点についても覚えておいてください。ただ、古い土地を売却する際など、土地の価格が高騰している可能性もあります。その際はしっかりと税金を納めましょう。
相続した不動産の売却であれば、取得費加算の特例を使える可能性
相続した不動産を売却するのであれば、取得時加算の特例を利用できます。
相続した不動産に対しては、売却の有無に関係なく、相続税が課税されます。さらに、不動産を売却すれば、譲渡所得が発生する可能性もあり、税負担があまりにも深刻です。
そのため、相続から3年10カ月以内の売却であれば、相続税で支払った税金の一定額を取得費に加算できる制度が「取得時加算の特例」です。
税金を納めなかった場合は厳しいペナルティを受ける
本来納めるべき税金を納税しなければ、本来納めるべき税金に加えて追徴課税が課税されます。追徴課税は、最大で20%にもなるので要注意です。
各年分の無申告加算税は、原則として、納付すべき税額に対して、50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合を乗じて計算した金額となります。
また、追徴課税は一括納税が基本となるため、分割払いや支払い猶予も認められていません。「知らなかった」では済まされないのが税金です。間違いのないように、しっかりと税金を納めましょう。
まとめ
今回は、不動産売却時の注意点についてお伝えしました。
不動産の売却は多額のお金が動くため、すべてのステップで慎重に行わなければいけません。特に、売却完了後の納税は「忘れていた」「知らなかった」などのことがないように注意しなければいけません。
会社員として働いている方であれば、納税にかかわることはあまりないため、知識に乏しい方もいるでしょう。もし、納税に不安を抱えているのであれば、税理士などの専門家へ依頼するのもいいでしょう。
不動産の売却は、専門業者でない限り、一生のうちに何度も経験することではありません。一生に一度のことだからこそ、細心の注意をはらい、理想の売却を目指しましょう。
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